「相続登記の義務化」から2年。綺麗事では片付かない、地方の「動かせない土地」のリアルな現実
1. 「罰金を払った人」を誰も見たことがない、制度の本当の舞台裏
亡くなった親や祖父母の名義のまま放置されている実家や土地の名義変更が義務化され、早いもので丸2年が経過しました。2024年の制度スタート時には、「放っておくと10万円以下の罰金(過料)がかかる」とメディアが大騒ぎしたのを覚えている方も多いでしょう。
しかし現在、皆さんの身の回りで「名義変更をしていないから、本当に国から罰金を科された」という具体的な話を耳にしたことがあるでしょうか。おそらく、ほとんどの方が「一度も聞いたことがない」というのがリアルな現状(ファクト)のはずです。
それもそのはず、全国に数百万〜数千万筆もあると言われる「名義が変わっていない土地」を、お役所の限られた人員で一つずつ手作業で調べ上げ、ペナルティの手続きを進めることなど、物理的に不可能です。現在は、近隣から苦情が出ている極端に危険な放置空き家など、目立つ場所から順番に手がつけられている段階であり、私たちの身近なレベルでは「まだ何も起きていない」というのが、義務化から2年が経った現場の本当の裏事情です。
2. 正直者が馬鹿を見る?「いらない土地を国に返す制度」のシビアな壁
「じゃあ、どうしても引き取り手のいない、どうしようもない土地はどうすればいいのか」
国もその受け皿として、義務化と同時に「相続土地国庫帰属制度(国がいらない土地を引き取る仕組み)」という新しい制度をスタートさせました。一見すると、困っている所有者を救うための親切な窓口ができたように見えますが、その中身(ファクト)をひも解くと、実務に関わる人間からすれば「どこの目線からモノを喋っているのだろう」と首を傾げたくなるほど、一般の市民にとって厳しい条件が並んでいます。
国に土地を引き取ってもらうためには、以下のような極めて高いハードルを、すべて所有者側の自己負担でクリアしなければなりません。
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建物が建っている土地はダメ(自分の大金で更地・処分しなければならない)
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隣の土地との境界線がミリ単位できっちり確定していないとダメ
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無事に審査が通っても、国へ「約20万円からの管理費(10年分)」をこちらが支払わなければならない
「遠方にあって使い道もなく、売ることもできない土地」で困っているから相談したいのに、国が言うのは「じゃあ、あなたがお金を出して綺麗に更地にして、境界も確定させて、さらにお金を添えて差し出すなら、引き取ってあげてもいいですよ」という、あまりにも冷徹な条件です。これでは、法律を熱心に守ろうとする「正直な人ほど、大損をして馬鹿を見る」と言われても仕方がありません。
3. 「家系」も「物理」も辿れない。本当に強制力が必要な「死んだ土地」
地方都市の不動産の現場で本当に問題になっているのは、こうした国が用意した綺麗な制度の枠には絶対に収まらない、「どうしようもない土地」の存在です。
例えば、登記簿を開くと所有者の名前が「明治生まれの曾祖父」のままで止まっている土地があります。これを今の法律で正しく名義変更しようとすると、家系図を何代も遡り、全国に散らばった「100人以上の孫やひ孫(相続人)」を全員探し出し、全員から実印と書類を集めなければなりません。中にはご高齢で認知症を患っている方もいれば、行方が分からない方もいます。話し合いのテーブルにつくことすら、家系的に不可能なのです。
さらに物理的な問題もあります。地方の古い土地や山林では、古い登記簿の書類(公図)に描かれた形と、実際の現地の土地の形が全く一致していない「地図混乱地域」と呼ばれる場所が今も山ほど残っています。現地に行っても、どこからどこまでが自分の土地なのか、誰にも分からないのです。
こうした「家系」も「物理」も完全に辿れなくなってしまった土地は、どんなに優秀な不動産屋や司法書士が間に入っても、現在の法律では手出しができない、実質的に「死んだ土地」になってしまいます。私たちは日々、実務の中で「こうした土地こそ、国や自治体がある程度の強制力をもって、一括で回収・処分するルールを作ってくれないと、街がどんどん虫食い状態になってしまう」という絶望的なジレンマを抱えています。
4. 国を当てにせず、自分の代で「紐を解いておく」という最大の自衛策
このように、国の作った制度は決して万能ではありませんし、困っている私たちと同じ目線に立って、パッと問題を解決してくれる魔法の杖でもありません。
だからこそ、私たちが今できる唯一にして最大の自衛策は、「国が何とかしてくれるのを待つ」のではなく、まだ問題が小さく、家族の記憶がはっきりしている今のうちに、自分の代で「うちの実家の名義はどうなっているか」という紐を一度だけ解いておくことです。
今ならまだ、親戚が数人で済むかもしれない。今ならまだ、昔の事情を知っている年長者が生きているかもしれない。国が強制的に助けてくれない時代だからこそ、先延ばしにせず「現状を知っておくこと」が、結果的に次の世代の子供や孫たちへ、決して負の遺産を回さないための一番優しくて確実な方法になります。
まとめ:綺麗な言葉に惑わされず、地元のリアルに寄り添う相談相手を
法律や義務化、国庫への帰属といった言葉は、どれもお役所の綺麗な書類の上では立派に見えますが、地方の現場で暮らす私たちの生活や不動産のリアルとは、どうしても大きなギャップ(ズレ)があります。
「テレビで言っている制度、うちの実家のケースでも使えるの?」 「何代も前の名義のままになっているけれど、もう諦めるしかない?」
そんな綺麗事では片付かない、誰にも言えない住まいや土地のモヤモヤがございましたら、どうぞ私たちにその本音をお聞かせください。
私たちは、国の受け売りではない、八戸のこの土地のリアルな現状と確実な事実(ファクト)をもとに、あなたのご家族にとって「何が一番損をしない、現実的な守り方なのか」を、どこよりもフラットに、同じ市民の目線で一緒に考えてまいります。どうぞ肩の力を抜いて、いつでも気軽にお声がけください。













